飲食店情報詳細

コート・ドール

◎エリア:東京都  ◎ジャンル:フレンチ

◎最終訪問日:2014年09月頃  ◎訪問回数:年0-1回

◎評価:★★★

◎投稿者:冬

 この20年程、こちらの料理に魅かれ、関西から幾度も港区のマンション三田ハウスの前に立った。それほどに、最初に食べたスペシャリテ「野菜のエチュベ」が衝撃的だったのだ。三田ハウスという名も、今では昭和の懐かしさをまとうようになってしまった。
 シェフの斉須氏については、今更説明するまでもないだろう。パリの伝説の三ツ星店ヴィヴァロワで、孤児院育ちの天才ベルナール・パコーと出会い、二人でランブロワジーという小さなレストランを開く。やがてランブロアジーは、ミシュランの三ツ星を獲得する。パコーと二人三脚で、レストランを三ツ星に押し上げた斉須氏は、生涯パリで安泰に暮らしていけるはずなのに、なぜか日本に帰国(凱旋というべきか)し、大歓迎のうちにコート・ドールを船出させた。
 その航海は、まさしく順風満帆というべきもので、日本料理を思わせるシンプルな料理は、万人に愛された。また、斉須氏の素朴な人柄も尊敬を集めた。それはフランスで知り合った料理人の紹介でこの店を訪れたときに挨拶に出てこられた姿を見て、瞬時に納得できるものだった。更に、その著書「十皿の料理」や「調理場という戦場」では、文才を示し、料理を超えて青春の物語を語りかける。
 私自身は、先にパリのランブロワジーを訪れたと思う。そのシンプルで素材の本質をついた料理は、オリンポスの神々の食べ物であるアンブロワジーの名にふさわしいものであった。これは、斉須氏の料理も味あわねばならないと、二十年前、初めてこの店を訪れた。そして、同質の料理が日本でも息づいていることを確認した。先に書いたように、その折の「野菜のエチュベ」に対する感動は今も色あせることはない。野菜を、レモンと塩とコリアンダーでポワレするだけという単純な手順。勘と反射神経だけの料理で、わずかなことで出来が天と地ほど分かれる。私も、「十皿の料理」に従って、毎年のように作ったが、天上の味となったのは数度にすぎない。
 そして、今日までコート・ドールは賞賛に包まれてきたが、日本版ミシュランは、この店を一つ星にしか評価しなかった。さて、何が正しいのか?興味を引かれつつ、H26年9月久しぶりに訪問した。
 
 今回は、仕事の関係で、昼に伺うことになってしまった。アラカルトを頼みたかったが、満席であったので、厨房に手間をかけてもと思い5000円の昼のコースとし、それに、こちらの夏のスペシャリテの一つ紫蘇と梅干のスープを追加することにした。
 結果から言うと、ミシュランの一つ星が正しいだろう。シンプルで、素材の本質だけを取り出して皿の上に展開する得難い店であるのは認めるが、新しいものを求めなさすぎる。また、日本料理のようでありすぎる。たぶんこれは、シェフが意図してやっていることだろう。きっと斉須氏は、あの店へ行けば懐かしいあの料理が食べられる・・・そんな店にしたいのだろう。日本料理のようであるのは、本場フランスでもそうなってきているので新しい傾向を追っているとも取れるが、フランス料理の匂いも留めぬぐらい日本的なものの場合はまた別だろう。また、何によるものかわからないが、昔の輝きがなくなっている。よって、フランス料理としては一つ星が妥当である。ただ、ひょっとしたらフランス料理という枠を抜け出した店になっているのかもしれない。その場合は、違った評価になるだろう。ネットでは、しばしば「正統派フレンチ」と書かれているが、パリのランブワジー共々、現在のフランス料理の本流からは離れた独自の料理である。
 カードルは十分心地よく、外観は、パリのランブロワジーに似ている。サービスも、よくこなれている。


(H26昼のコース+紫蘇のスープ)
1.紫蘇と梅干のスープ:〇斉須氏のスペシャリテ。暑い夏には、刺激的な酸味のあるこのスープは良いだろう。
2.赤ピーマンのムース:〇言わずと知れたパコーが作り出した名品。ピーマンがここまでの美味を秘めていたのかと、目からうろこの落ちる料理。ランブロワジーでは、もっと軽く作っていたが、こちらのものも美味しい。
3.野菜のエチュベ:〇美味しいのだが、昔の感動は蘇らない。
4.鱸のカリカリ焼きと言っていたかな:△皮がはがれており、見栄えが良くない。ポワローの入ったジュ(出汁)がスープ皿に多めに張られており、どこから見ても日本料理のようだ。
5.生姜のソルベ:〇良い出来だが、今日ではよくあるもの。
6.デザート:〇非常に地味な焼き菓子。これも、デザートが数多く、華やかになりすぎている昨今のフランス料理に、わざと逆らっているように見える。
7.プチフール:〇やや地味。

■店舗情報

◎住所:東京都港区三田5-2-18 三田ハウス 1F

◎連絡先:03-3455-5145

◎営業時間: 12:00~13:00(L.O)、18:00~20:30(L.O)

◎定休日:月曜・第2火曜・夏期休暇(8月中旬頃)、年末年始

◎予算:夜、2万円前後。昼のコース5000円。

◎ホームページ:

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