飲食店情報詳細

一宝 本店

◎エリア:大阪府  ◎ジャンル:天ぷら・揚げ物

◎最終訪問日:2014年07月頃  ◎訪問回数:2回

◎評価:★★★★

◎投稿者:冬

東京一極集中で、数百年の歴史を誇る大阪の料亭は次々と姿を消していった。大和屋、堺卯、つる家、阪神間では、播半・・・庭の美しい木々は、どうなったのだろうか。花外楼、錦戸は、今に続くも、昔の洗練された日本家屋はもうない。その中で、一宝は、大阪の豊かだった時代、といっても明治大正期ではなくつい30年前のことだが、それを忍ぶよすがとなる店だ。

一宝も、一見さんお断りでもなくなり、ビルになってしまった。それでも、かつての大和屋を思わす大型車で乗り付けられる門、白木の柱など、昔の大阪の料亭の雰囲気を残した貴重な店だ。
 玄関を入ると、大きな大黒様が迎えてくれる。まず、最初に、待合へ通される。人数が揃えば、座敷へ異動し前菜などをいただき、次いで部屋を変えて天ぷらを、最後に座敷に戻って、食事(天茶、天丼など)、水物となる。
 座敷は清潔で、掛軸、香炉、大理石の水盤、どれも心が魅かれる。器も良く、特に、金を漆に沈めたり直接塗ったりと様々に見せてくれるお椀は、見事なものだった。  
 この部屋では、昆布茶、銀杏豆腐、前菜盛り合わせ、お造り、アマダイのお椀をいただいた。全体に、無難な出来だったが、その中では、銀杏豆腐が面白かった。薄緑の色合いが美しい。しかし、わずかに固すぎた。

 天ぷらのための部屋は、鍋を中心に、コンパクトに纏まっている。相席にはならないので、周りは知人だけである。目の前には、銀器が並ぶ。天ぷらを置く皿から、天つゆの器まで、ぎらつかない銀の光が目に優しい。神は細部に宿るというが、贅沢も細部に宿るのである。天ぷら油は、紅花油で、客ごとに取り換える。ただし、油の量は、あまり多くなかった。
 天ぷらは、普通に見えて、うまく揚がっている。最近は、京星、与太呂と、極薄で硬質の衣の店に続けていったのだが、一宝のような普通の衣が一番好ましい。ただ見た目が平凡なので、超高級店と期待した人には、この程度かと思わせるかもしれない。しかし、この種の衣としては、薄く、カラリとしているがフワリともしているという最上の出来である。これを分かるには、楽亭や近藤の天ぷらを経験してみるしかないだろう。天ぷらは13種。うちは門徒だから、気にすることはない。エビが小ぶりで、淡雪のような味わいだった。ただ、2-3のタネで、もう少し油が切れていればと思うことはあった。最後の天茶は、塩を入れ忘れたんじゃないかと思う程の薄味だった。
 サービスは、無駄口をきかぬプロフェッショナルなもの。会計は、23,000円が土曜割引で18,000円であった。

 ミシュランがこの店を一つ星にしたのは、分からぬではない。料理の感動を重く考えたのだろう。しかし、それは正当なこの店の評価とは思われない。料理以外の器や調度品、建物、部屋、サービスなどが、一体となって贅沢をしたという満足感を生んでいる。料理は、その一部と評価すべきである。

8.5点

(H23.11)


(H26.7)

■店舗情報

◎住所:大阪府大阪市西区江戸堀1-18-35 肥後橋IPビル 1F・2F

◎連絡先:06-6443-9135

◎営業時間:11:00~14:00 17:00~22:00

◎定休日:日曜日・祝日

◎予算:2万~3万

◎ホームページ:http://www.ippoh.com

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